Words and Feathers

ボカロ・旅行記・夢日記などつれづれに。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ethic and esthetics*

数日前、googleのロゴが以下のような画像になっていました。

エドワード・ゴーリー生誕88周年

アメリカの(大人の)絵本作家、エドワード・ゴーリーの誕生日を記念したものです。

彼の絵本を知ったのは、柴田元幸氏による翻訳本が書店に並び始めた2000年頃です。
ちょうど英会話スクールに通い始めて1~2年経った頃で、
まだ英語の小説は読めないけど、何かで英語に触れていたい、
もっと理解できるようになりたい、と思っていました。

最初に手に取ったのは、恐らく『ギャシュリークラムのちびっ子たち』だと思いますが、
もしかしたら『うろんな客』かも知れません。
どちらにせよ、ほぼ同時に買い求めた記憶があります。

陰気でありながら、独特の可笑しさと愛らしさを併せ持つ絵柄、
短い英語詩と、ユーモラスな訳文。
一目で気に入り、すぐに購入しました。

さて、それで、この絵本が私の英語の勉強の役に立ったかというと、
初期段階においてはNO、しかし後になるほどYESだったと思います。
『ギャシュリークラムのちびっ子たち』を例にして、説明しましょう。
以下はWikipediaでも引用されている部分と、更にDを追加します。

A is for AMY who fell down the stairs Aはエイミー かいだんおちた
B is for BASIL assaulted by bears Bはベイジル くまにやられた
C is for CLARA who wasted away Cはクララ やつれおとろえ
D is for DESMOND thrown out of a sleigh Dはデズモンド そりからなげられ

(ギャシュリークラムのちびっ子たち:柴田元幸・訳 河出書房新社)

こんな感じで、AからZまでの子供の名前と、彼らの悲惨な死が描かれていきます。
(裏表紙には墓石が並んでいます。)
このあたりまではそれほどでもないですが、中にはすごい意訳が含まれていますので、
「この英文はこういう意味なのか・・・」という感じの勉強には、あまり使えません。

それに自分自身が英語に馴染めていない段階では、つい訳文だけを読んでしまいます。
翻訳本なのだから、原文を掲載する意味はあまり無いのでは?と思うかも知れません。
しかし少し英語が理解出来てくると、この体裁だからこそ面白いことが分かってくるのです。

まずAからDまでの英文を、声に出して読んでみて下さい。
教室で先生が読み上げ、生徒が繰り返す、そんな場面を想像しながら。
とても韻律が良いので、子供たちは元気に先生の言葉を繰り返します。
でも言ってることは「階段落ちた」とか「熊に殺られた」とか、
それがZまで続く訳です。思わず笑ってしまいませんか?

また、この英文は2行ずつで丁寧に韻を踏んでいます。

stairs ステアーズ / bears ベアーズ
away アウェイ / sleigh スレイ

そして訳文は、この形式に則って脚韻を踏んでいくのです。

おちた / やられた
おとろえ / なげられ

しかし、ここで翻訳上の課題が(恐らく)発生したのでしょう。
英語では、原則として『主語』『動詞』『その他』の語順となり、
『その他』の部分を工夫して押韻することで、リズムを作ります。
一方、日本語では『主語』『その他』『述語』の語順となり、
『述語』の部分に主に使われる動詞・形容詞・形容動詞・助動詞などは、
活用形が同じなら語尾は同じなのが当たり前なので、
普通の文章で脚韻を踏んでも、むしろ単調になってしまうのです。

そこで訳者は、体言止めや倒置、擬音や頭韻も活用して、
訳文にも原詩と同じような韻律を作り上げました。
あくまで2行一組で、原文や挿絵と矛盾しないように。

原文・訳文併記の形式によって、翻訳者の苦労と工夫、
そして英語詩における面白さのポイントが、よく分かるようになっています。
この翻訳上の着眼点は、後で私が英文を書くときの参考になりました。
留学中、日記を書いて提出する課題があった時に先生から、
「あなたの文章構成は文学的で、とても美しいので好きです」
と褒めてもらえたことがありました。
読んだ場合のリズムを感じながら書くことは、
『読ませる』文章を書くための、不可欠なポイントなのだと思います。

ところで、記事タイトルの『倫理と美学』についてですが、
ゴーリーの作品は、倫理的に学ぶところは全く無い、
不条理・不道徳・非人道的な筋立てと言って良いでしょう。
かと言って、反社会的作品にありがちな『悪徳の美学』とか、
不条理文学のようなナンセンスさにも重きが置かれず、
視覚的・文学的な美を追求しているところが、魅力だと思うんですよね。

作品の『世界観』『筋書き』『道徳性(または非道徳性)』、
あるいは単純に『衝撃度』みたいなところに目が向けられがちな社会ですが、
内容よりも形式を重視するような流れが、もう少し強くなった方が、
作品の質は向上していくんじゃないのかな、という気がします。

* "esthetics"は通常"aesthetics"という綴りが正しく、
eで始まるのはアメリカ英語的だそうです。
ここではethicと脚韻だけでなく視覚韻を踏むため、
またイギリス人とよく誤解されたアメリカ人のゴーリー氏に掛けています。


読んで下さった方、拍手して下さった方、有難うございました!
関連記事

*Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

Menu

W&F Counter

いらっしゃいませ!

番目のご訪問です☆

Posted Date

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Questionnaire

ブログの感想を教えてね♪          複数選択は連続投票でどうぞ。

コメントは管理者のみ表示です。

Search by a keyword

twitter

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。