Words and Feathers

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Point of No Return

最近は、漫画を読む回数もあまり増やさないようにしています。
(新しい作家に手を出さないという意味で)
ずっと継続して読んでいたい作家さんは、数名かな。

その中のひとり、紫堂恭子さんについて。

初めて読んだのは5年前くらいで、妹の持っていた単行本でした。
メインで連載していた雑誌が相次いで休刊となり、
緻密な構成や作画ながら、現在の主流とは言えない作風で、
なかなか掲載媒体が調わないところが残念なのですが、
本当に良い作品を発表されている方だと思います。

主なストーリーはファンタジー。
本人がトールキンの影響を受けていると言うとおり、
指輪物語のような王道ファンタジーの、少女マンガ版といったところです。
カラー絵の男性の口元の塗りのクセが若干気になるのですが(笑)、
ページの隅々まで細かな描写の背景や、可憐な女の子の描き方、
やたらと美味しそうな料理やお菓子など、
どこをとっても丁寧な絵も魅力です。手抜き感が全くありません。

丁寧なのは、ストーリー構成とキャラ設定も同じ。
特に私が良いなと思うのは『悪』の描き方です。
一見キラキラ・ふわふわなファンタジーながら、割とエグい悪役が登場します。
それが、ただ理由もなく最初から『悪人』なのではなく、
きちんと悪に堕ちる物語が(全てではないけれど)あるのですね。
安易なストーリーだと、その『悪の理由』によって読者の同情を買ってしまったり、
また物語の中で簡単に更生したり、許されてしまったりするのですが、
そういう安易さはありません。

現代の社会では、自分の外側に『悪』を求める傾向が強いように思います。
『他罰的傾向』と言ってもいいかも知れません。
相手は悪である、よって自分は善である。
自分がまっとうである、と信じるために、まっとうでない誰かが必要であり、
常に「あいつらは」と他人を非難することで、自分の足場を固めようとします。

ですが、『悪の種』というものは、恐らく誰の内にも潜んでいるものです。
その悪の種が芽吹くかどうか、それは種の発芽力(悪の衝動の強さ)や、
置かれた運命・環境に大きく左右されるし、
それが大きく蔓延るか途中で刈り取れるかは、
やはり本人の抵抗力(衝動の抑制力や賢明さ)と、周囲の枠組みというところでしょう。
いずれにせよ、全くその種の無い人間というのは稀だと思います。

それでは、自分の中にも悪の種があるのなら、
他人の悪も許さなければならないのか?と、反論があるかも知れませんが、
そういうことではないです。
個人の中の悪とは、ガン細胞のようなものと考えれば理解しやすいでしょうか。
ある一定のラインを超えてしまえば、手の施しようがありません。

例え悪に堕ちた理由があっても、それは免罪符にはならない。
自分の中の悪を放置し、越えてはならない一線を越えてしまったとき、
いずれ自分の良い部分も、全て食い尽くされてしまうということ。
そのことを、自らへの戒めとして忘れてはならないと思います。

紫堂さんの作品に話を戻すと、彼女の描く『悪』は、
あくまで人間の内側から現れながら、化け物のようにおぞましく、
読者の同情や共感は誘わず、それでいてキャラとしての魅力を保っているのです。
よく見受けられる『魅力的な悪役』というものが、非常に薄っぺらな悪の根拠と、
ある種の超人さ(美しさだったり特殊能力だったり)に安直によっかかって、
読者の憧れを誘っていることとは一線を画している、と私は思います。
きっと彼女は、とても内省的な人なのでしょう。

ちょうど昨日読んだ新聞(中日新聞日曜版)の記事でしたが、
大島渚監督が、ある殺人事件と映像作品との関係について問われた際、
「特殊なマニアの嗜好を満足させるためだけの、安易な映像が量産されれば、
人間の想像力を誤った方向に導く可能性がある」と答えたそうです。
(今、手元に記事が無いので不正確な引用ですが)
誰も彼もが絵を描いたり文章を書いたりし、簡単に公開できる現代ですが、
自分がこうして書いているブログの文章も含め、
「ただ自分の欲求を満足させるためのものを『表現』と呼んでいないか」
「ただ自分の正当性を訴えたいだけの内容になっていないか」
という視点を、『作品』として公開されるもの全てに対して持っておきたいですね。

紫堂さんのファンタジー作品は、自身の趣味を大いに反映させながら、
人間の様々な面を普遍的に描ききっているところが魅力です。
私のイチオシは『王国の鍵・全6巻』です。
ファンタジーに抵抗の無い方なら、是非読まれることをお勧めします。


読んで下さった方、拍手して下さった方、有難うございました!
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